Sam Fender(サム・フェンダー)『Seventeen Going Under(セヴンティーン・ゴーイング・アンダー)』

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この世に楽しく生きている若者なんているのか?

2021年12月3日分 UK Official Singles Chart Top100 第8位(20週チャートイン 最高位第8位)

【追記】2022年1月7日分 UK Official Singles Chart Top100 第3位までランクアップ!

今回は、経済的困窮や心身ともに苦しんでいる人に聴いてもらいたい、Sam Fender(サム・フェンダー)の『Seventeen Going Under(セヴンティーン・ゴーイング・アンダー)』をおすすめします。

サム・フェンダーは、イングランド・ノースシールズ出身の27歳(※2021年12月現在)

8歳の時に実母が家出。ティーンエイジャーの頃に継母に家を追い出され、17歳の時に実母と再会します。

しかし実母は線維筋痛症という病に罹患したうえ、サム自身も20歳の時に生命を脅かす病気になり、その恐怖や苦悩が音楽を創作する大きなモチベーションやエピソードとなったようです。

2018年にBBCの『Sound of 2018』に選出されて注目を浴び、翌年にはアルバム『Hypersonic Missiles』が評価され、ブリット・アワード批評家賞を受賞。

自身の経験や両親との関係、政治システムや人権問題も含めた弱者への理解、そうしたテーマを生々しい楽曲として世に放つ、近年とても貴重なシンガーソングライターだと言えます。

それを最も表しているのが、この『Seventeen Going Under』が収録された同タイトルのアルバムが全英チャートで初登場ナンバーワンを獲得した事実でしょう。

参照元:Sam Fender on Seventeen Going Under and Making Sense of It All




もう子供ではない、でも大人でもない17歳。

「Seventeen Going Under」は「going under」に「沈む、溺れる」といった意味があるので「沈みゆく17歳」という感じになるでしょうか。

どんな歌詞なのか、すべて和訳してみます。

I remember the sickness was forever
(病気は永遠だったのを覚えてる)
I remember snuff videos
(スナッフビデオも覚えてる)

※エンタメとして流通させる目的で、実際に殺人の様子を撮影した映像作品のこと。 スナッフムービー、殺人フィルムともいう。
Cold Septembers, the distances we covered
(冷たい9月 俺たちが踏破した距離)
The fist fights on the beach
(砂浜で殴り合う拳)
The Bizzies round us up
(警察が俺たちを一斉に狩る)
Do it all again next week
(来週も全く同じことをする)
An embryonic love
(未発達の愛)
The first time that it scarred
(傷として残った初めての瞬間だった)
Embarrass yourself for someone
(誰かのために恥をかく)
Cryin' like a child
(子供のように泣き)
And the boy who kicked Tom's head in
(トムの頭に蹴りを入れた少年)
Still bugs me now
(いまだに俺を悩ませる)
That's the thing, it lingers
(こういうのに限っていつまでも残る)
And claws you when you're down
(落ち込んだ時 搔きむしってくるのさ)

I was far too scared to hit him
(あいつを殴るのを怖がりすぎてた俺がいた)
But I would hit him in a heartbeat now
(けど今なら速い心拍数であいつを殴っているだろう)
That's the thing with anger, it begs to stick around
(怒りとはそういうもの つきまとうよう懇願してくるから)
So it can fleece you of your beauty
(君の美しさは巻き上げられてしまう)
And leave you spent with nowt to offer
(そして価値のないものしか残らない)

※nowt=nothing[北イングランドでの用法]
Makes you hurt the ones who love you
(君を愛してくれる人を傷つけてしまうような)

You hurt them like they're nothin'
(彼らが何者でもないかのように傷つけてしまう)
You hurt them like they're nothin'
(彼らが何者でもないかのように傷つけてしまう)
You hurt them like they're nothin'
(彼らが何者でもないかのように傷つけてしまう)

See, I spent my teens enraged, spirallin' in silence
(見ての通り 10代は怒りに時間を費やした 沈黙の中のスパイラル)
And I armed myself with a grin
(笑顔で武装した)
'Cause I was always the fuckin' joker
(俺はいつもクソったれなジョーカーみたいだった)
Buried in their humour amongst the white noise and boys' boys
(ホワイトノイズや少年たちの冗談に埋められた)
Locker room talkin' lads' lads
(ロッカールームが若者たちについて話す)
Drenched in cheap drink and snide fags
(安いドリンクと意地悪な雑用に浸されて)
A mirrored picture of my old man
(鏡に映った父親)
Oh God, the kid's a dab hand
(あぁ その子供は名人さ)
Canny chanter, but he looks sad
(利口な先唱者だよ でも彼はとても悲しそう)

God, the kid looks so sad
(その子はとても悲しそう)

She said the debt, the debt, the debt
(彼女は借金、借金、借金だと言った)
So I thought about shifting gear
(だから俺はギアを変えようとした)
And how she wept and wept and wept
(すると彼女はどれだけ泣いて、泣いて、泣いたか)
Well, luck came and died 'round here
(幸運はやって来て 近くで息絶えた)
I see my mother, the DWP see a number
(俺には母が見える DWPには数として見える)

※DWPとはイギリスの労働・年金省
She cries on the floor encumbered
(彼女は床にうつぶせになって泣く)

I'm seventeen goin' under
(俺は沈みゆく17歳さ)
I'm seventeen goin' under
(俺は沈みゆく17歳さ)
I'm seventeen goin' under
(俺は沈みゆく17歳さ)
I'm seventeen goin' under
(俺は沈みゆく17歳さ)
I'm seventeen goin' under
(俺は沈みゆく17歳さ)

サム自身、この歌詞は17歳だった自分に宛てた内容だと語っているようですが。

本当にその当時の八方塞がりな状況が目に浮かびつつ、やり場のない怒りや悲しみといった失望感がひしひしと伝わってくる歌詞です。




特に後半で母親の借金のために「So I thought about shifting gear(だから俺はギアを変えようとした)」とありますが。

実際、労働・年金省は重い病気になった母親を働かせようとし、サムはドラッグの売人になろうと考え、母親に説得されています。

考えてみれば17歳という年齢は、もう子供ではないけど、意志さえあれば何でも選択できるような大人でもなく。

どうにもできない葛藤や病人の母親の病を通して見えてきた社会に対する怒りが、無機質な世間とコントラストに映り、リアルに感じざるをえません。

でもサムはただ母親を守りたい心優しい息子です。

…にしても、スナッフビデオって何?怖っ!




「若さ」がメリットと言えない世の中になってしまった。

個人的にこの楽曲から感じたのは、「若さが特権」だと言えない世の中になってしまったことでしょうか。

コロナ禍になって余計に思うのですが。

大人が次の世代へとなるべく安心感とともに世の中を継承してあげる行為こそが「幸せ」だと思うのです。

しかし、実際周りを見渡せばそんな考えは遠い昔のように思えます。

もちろんいつの世も地球上で苦しんでいる人や国は存在しますし、進化であれ退化であれ、何か変化が起こる度に取り組むべき課題はどうしても現れるものですが。

日本も含め、あらゆる場所で子供が未来に希望を抱けない時代が到来しているように感じます。

Youtubeではこんなコメントが残されていて、千人以上がいいねを押しています。

Keep up the good work Sam, same age as me so your music really speaks for our generation.
(サムにはこれからも素敵な仕事をし続けてほしい。私と同じ年齢のあなたの音楽は私たちの世代のために真に語ってくれている。)

自分たちと同じつらい思いをしないよう、子供たちのために変える努力ができる人間が「大人」だと言えるのではないでしょうか。

そんなことを考えさせられました。